懐かしきボ日々

日々の雑感を綴るブログ。今の所、ボードゲームを楽しんでいた日々の回顧。

タルヲシル炎上事件にて報酬を持ち逃げしたA氏について調べてみる

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『朗読劇キズナと蛍の物語』クラウドファンディングのスタッフ欄より抜粋

 先日、創作集団タルヲシル株式会社についてブログ記事を書いたが、その炎上と休業に大きく関与したA氏について調べてみると、意外なことにかなり詳しいことまで判明したので、ここに記しておく。

 A氏の罪状は……
 2018年、創作集団タルヲシル株式会社が主催した朗読劇『キズナと蛍の物語』において監督を務めたが、そのDVD化に際して支払われる楽曲制作報酬を、音楽家に無断でタルヲシル社と金額交渉をし、そして横領した。何も知らされていない音楽家は無償での仕事と思い込み、DVD発売に際しタルヲシル社に問い合わせたが、タルヲシル社の対応の失敗からトラブルに発展し、インターネット上で大炎上となった。音楽家とタルヲシル社は炎上に関し交渉をし、A氏による詐欺が両者の目に明らかとなったが、すでにA氏は逃亡した後だった。その後、音楽家とタルヲシル社は交渉を続けるも和解に至らず、タルヲシル社の休業という形で事件の幕は下りた。(追記:2021年破産決定
 タルヲシル社の休業は社長の言動など自業自得な面もあるが、タルヲシル社や炎上を調査した関連会社によれば、A氏の詐欺を起点としているとの結論だった。したがって一種のバイトテロとも言えるであろう。

 

 ボードゲーム × 舞台!異色のコラボで送る異能バトル劇「朗読劇 キズナと螢の物語」製作プロジェクト

 A氏の正体については、タルヲシル社と音楽家の双方が「スタッフを務めた」とし、タルヲシル社の関係者が「クラウドファンディングのページに名前がある」とし、タルヲシル社の関連会社が「監督を務めた」との声明文を出している。上のリンクが当該クラウドファンディングのページであるが、スタッフは総監督、原作(タルヲシル社社長)、音楽、主題歌ボーカリストの4名しか記載がないので、「 金山大樹 」 なる人物がA氏に該当する
 

 この人物についてさらに調べてみる。
 まずGoogle検索をかけると、以下のような結果となった。

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 同姓同名が多いようであるが、演劇をキーワードとすれば特定しやすい。高校演劇部員のTwitterアカウントがヒットするが、フォロワーに当該音楽家もいることからA氏で間違いないものと思われる。したがって2013年ごろに高校生だったことと、群馬県出身であることが分かる。

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 群馬県出身であることから、おそらく以下の求人票が該当するものと思われる。出身高校や仕事歴が明らかとなる(2018年8月で辞めているが、炎上事件から逃亡するため?)

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 彼と音楽家とのTwitterでのやりとりはまとめ記事に書かれているが、それによると彼のTwitterアカウント名は「@ioritakase141」であったらしい。現在はアカウントが削除されているが、検索すると「高瀬伊織」というハンドルネームであったことがわかる。そしてこの「高瀬伊織」で検索すると、割とよく使われる名前らしく複数の人物がヒットするが、出身地や演劇関係で特定できる。生年月日や血液型身長まで記載されている。

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  クラウドファンディングのページには、彼のTwitterIDは「@kanaseedgamer」とあるが、やはり現在は削除されている。しかし検索をかけると、音楽家のメッセージが出てくる。どうやら彼はタルヲシル社だけではなく、音楽家とも金銭トラブルを抱えていたようだ。

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 炎上事件に関係したA氏の詐欺は、もしタルヲシル社が音楽家にDVDを送っていたなら発覚しなかった。そういう意味では非常に巧妙な詐欺だった。しかし一方で、顔出しの仕事で犯行に及ぶというのは非常に短絡的だったといえよう。

 言うまでもないことであるが、インターネットの履歴は消えにくく、クラウドファンディングのページに至っては永久に消えることがない。

「金山大樹」なる名前が本名であるか、あるいは役者としての芸名であるかは分からないが、いずれにせよGoogle検索の1ページ目に罪状付きで表示されてしまっている現状では、舞台の仕事はできないと思われる。

 もし本名であれば、彼は就職や人間関係に苦労しているのではないだろうか。特に今後、結婚や子育てについて考えるならば、あまりにも大きなハンディキャップとなる。今からでも遅くはないのでA氏には、タルヲシル社と音楽家に連絡を行い、謝罪し、金銭問題その他を解決し、そしてインターネット上の履歴の消去作業に取り掛かることをお勧めする。

 

 彼は若さゆえ、あるいは演劇関係者ゆえの自己顕示欲で、様々なサイトで自己アピールを繰り返していた。今どきの若者にはよくありがちなのであろうが、一旦犯罪などに関わると、このように個人情報が無制限に晒されてしまう。しかし彼の浅はかさを我々は笑うことは出来ない。インターネットを利用する者は、多かれ少なかれ個人情報を入力しているからだ。しかし少なくとも、犯罪の主体とならなければ、不名誉なデジタルタトゥーを刻むことはないであろう。他山の石として気を付けたいところだ。

タルヲシル炎上事件を振り返る③(感想)

感想その1

 調べたことをつれつれと書いていたら、思いのほか長文となってしまった。ただ、これだけ書いても、たぶん本質には届いていないのだろう。
 どうにも表に出ていない情報が多すぎるようだ。同人音楽サークルは島津社長の暴言スクショをアップした割には、その後のタルヲシル社との交渉スクショは公開していない。タルヲシル社も同様に、同人音楽サークルとの交渉過程を声明文に盛り込んでいない。舞台準備の最中、島津社長と同人音楽サークルの代表とは折り合いが悪くなり、しかしA氏との関係性は継続したようだが、A氏とタルヲシル社とのメールやLINE等の通信記録は公開されていない。タルヲシル社の関係者複数名は「10月に同人音楽サークル代表が金銭授与に関与していた証拠が出せる」と述べていたが、むしろ10月から沈黙した。
 また、あまりにも謎が多すぎる。タルヲシル社は「報酬を支払った」と声明文を出す割には、そのコピーは提示されていない(つまり金額が分からない)。朗読劇は第2弾が予定していたようだが、なぜか役者を再募集している(あれだけ丁寧な謝辞を述べていたのに再雇用はかなわなかったのか?)。同人音楽サークルの代表は9月4日の時点で「怖くて返信できない」とし後に入院したようだが、いったいタルヲシル社はどのような和解交渉をしたのか(作曲家が賠償金の話題を出しているが、金銭を強く要求したのか?)。なぜ報酬を持ち逃げしたA氏に責任を求めようとしなかったのか(A氏こそ詐欺の容疑で刑事告発できる)。
 おそらく……10月から本格的に弁護士が介入したため、タルヲシル社、同人音楽サークル、およびタルヲシル社の関係者は表向きには口を噤まざるを得なかったのであろう。しかしおおまかで良いのでどのような帰結となったのか公表してほしいと思う。当人たちには申し訳ないが、炎上の対策と失敗についての良き凡例となるであろうからだ。


感想その2

 一ボードゲーム愛好家として、この事件における島津社長のプレイは理解できない。どのような勝利条件を設定していたのかは分からないが、万に一つの勝ちも存在しないゲームだ。

 以下、島津社長の不利な点を列挙する。
 ・本名を出しているのは島津社長(おそらくA氏も)のみ。同人音楽サークル側は匿名。島津社長(およびA氏)は顔写真まで公表している。
 ・同人音楽サークルは無償で仕事をしたとのことなので、タルヲシル社は彼らの口座番号を知らないのではないか。むしろ住所や本名すら知らない可能性がある。したがって民事訴訟でもし勝訴したとしても、賠償金の差し押さえは極めて難しい。
 ・炎上はタルヲシル社の経営にダメージ。交渉が長引けば長引くほど、タルヲシル社の経営は悪化する。同人音楽サークルは趣味の集まりなので、実生活にダメージはない。むしろ牛歩戦術が有利となる。
 ・訴訟に発展した場合、スラップ訴訟となる。裁判の結果如何によらず、顧客のイメージは悪くなる。またスラップ訴訟は「言論の封圧や威嚇を目的として行われる」ものであるが、沈黙している匿名の相手にはあまり効果があるとは言えない。
 ・訴訟を行うにしても、名誉棄損は成立しにくいと思われる。LINEの会話をネットにアップした行為については、暴言の被害者は同人音楽サークルである。そして詐欺を働いたのはA氏であり、金銭面でも同人音楽サークルは被害者。訴えるべきは詐欺をはたらいたA氏であり、敵を間違えている。
 ・暴言を発せねばならなかった理由が最後まで説明できなかった。タルヲシル社の関係者も暴言に関しては否定的であった。
 ・暴言と報酬との関係性が説明できなかった。報酬を払っていたとしても、暴言が許されるわけではない。
 ・金銭問題の潔白を訴えるなら、舞台予算およびDVD制作費用の明細を公表すべきだった。最低でも、A氏への支払明細書および支払いに至るまでの交渉記録は公表すべきであった。公表できない理由があるのならば、それはタルヲシル社の瑕疵でしかない。
 ・ネット上の大多数の意見はタルヲシル社に否定的。どのような和解を行おうとも、落ちた企業イメージが戻る見込みはない。

 裁判をしても勝てない、賠償金も取れない、自社の経営が上向きになるような和解案は発案すらできない、和解が長引くほどに経営にダメージ、そして何より勝手に動く取り巻き。
 将棋に例えれば、飛車角が取られ桂馬のみ4つある状態か。王道エンターテイメント社をはじめ関係者がネット工作を繰り返していたが、敵の層は厚く積極的に動かないので王手に届かず、しかし盤をひっくり返すこともできず……

 タルヲシル社の不可解な炎上への対応はもしかすると、年間利益200万円しかない事業だったので切り捨てる算段ゆえだったのかもしれない。採算的にボードゲーム事業部は社長の趣味で創設されたと推測されるので、社長の不始末で畳むのは正しい判断ではあるが……
 件のゲーム『キズナと蛍の物語』は追加パックが2種発売され、海外版も発売、朗読劇に漫画化と事業を多角的に展開していた。おそらくようやく黒字に転じ、これから本格的にボードゲーム事業に参入するつもりだったのであろう。野心的な会社がたった一言の暴言で消えるというのは、一ボードゲーム愛好家として悲しくもある。しかしやはりあの暴言はクリエイター生命を失うには十分すぎるものだったとも思う。

 

タルヲシル炎上事件を振り返る②(論点の追加)

 私はタルヲシル炎上事件の朗読劇原作となったボードゲームキズナと蛍の物語』を見たことはあるが、プレイしたことはなかった。タルヲシル社についてはゲームマーケットへの出店は知っていたが、朗読劇については知らなかった。したがってこのゲームに愛着があるわけではないが、それにしてもこの炎上事件によってボードゲーム業界が悪く言われたことについて、腹立たしい気持ちで一杯となった。
 しかしさりとてタルヲシル社は擁護できない。ごく当たり前の感想として、社長の暴言はいただけない。炎上の後始末を、なぜ延々と無報酬のクリエイターに求めていたのかも分からない。和解よりも会社の休業を選ぶという判断も謎だ。
 あまりにも多くの突っ込みどころのある事件であるが、以下、当時あまり考察されていなかった論点を列挙し、まとめサイトの補完となることを目的とする。


・タルヲシル社ボードゲーム事業部の年商は思ったほど大きくない

 タルヲシル社社長島津氏の手記によると、件のボードゲーム『キズナと蛍の物語』は1000個ほど印刷したようだ。ボードゲームにしては多いとのことだが、同年に制作した商品は他になく、定価4000円程度であることを踏まえると、年商は400万円ほどでしかない。印刷代や販売手数料その他各種経費を除けば、利益は200万円を下回ることであろう。
 炎上事件の後始末について同人音楽サークルの作曲家が「得をするのは弁護士だけ」と発言していたが、一定の説得力を持つ。弁護士費用は経費扱いとなるのだろうが、だとしても数十万円の出費は覚悟せねばならず、もし裁判になった場合、200万円の利益の半分以上もしくはほとんど全部が消えてしまうのだ。


・制作された音楽のクオリティは問題にできない

 タルヲシル社の関係者や王道エンターテイメント社は、同人音楽サークルが制作したBGMのクオリティをとかく問題視していた。しかしごく当然のこととして、そのクオリティで良しとしたのはタルヲシル社社長であり、クオリティを問題視することは社長の判断を問題視することに等しい。
 また、あくまで私見であるが、タルヲシル社は音楽のクオリティを言える立場にはないように思う。
 まず、件の朗読劇の主題歌はタルヲシル社が制作したようだ。
 「キズナと螢の物語」主題歌 「二人のキズナ」作詞・作曲:創作集団タルヲシル株式会社 歌:Kurumi
 次に、同人音楽サークルがBGMとして制作した20曲のうち3曲が以下となる。

 無料BGM集001「おちゃめ」byなりものじあ

 無料BGM集002「流れない時間」byなりものじあ

 無料BGM集003「覚醒」byなりものじあ
 主題歌はボーカル付きであるが、ボーカリストは音楽サークル側の人物らしいので、主題歌は背後のオケ部分のみで判断することとなる。音楽の優劣について、音楽にさほど詳しくない私にはやや判断しかねる部分があるが、少なくともこの主題歌を以てして同人音楽サークルのBGMを批判できないであろうことは分かる。
 また、主題歌の作曲を自前でできるのに(音楽スタッフが存在していた?)、なぜBGMを外注したのかもわからない。


・社長と同人音楽サークルとは不仲だったのではないか

 社長は朗読劇開演に際し、スタッフに謝辞を述べている。役者には個々に長文にて労っているが、ここに同人音楽サークル関係者の名前は無い。同人音楽サークルは20曲を無料で制作したようだが、一言たりと謝辞が無いのはあまりにも不自然すぎる。

・A氏のスタッフとしての立ち位置

 王道エンターテイメント社によれば、報酬を持ち逃げしたとされるA氏は舞台の監督を務めていたとのことである。クラウドファンディングでは「総監督」、パンフレットでは「総監督/演出」と記載される人物がそれに相当するのであろう。
 A氏について、同人音楽サークルは「スタッフを降板」と言い、タルヲシル社は「降板していない」との声明文を出した。しかし上で引用した社長の謝辞には、A氏への謝辞もない。それどころか監督の存在を匂わせるような一文も存在しない。普通であればA氏は降板していないのだから「監督がんばってくれた金山大樹くん、舞台は成功しましたよ」などと挨拶をすべきであろう。舞台において音楽は無視できても、監督や演出の存在は無視できるはずがない。
 したがって、「A氏は降板させられた」という同人音楽サークルの説明は一定の説得力を持つ。

 

・DVD発売は約束されたものではなかった

 件の朗読劇はクラウドファンディングの出資により運営されていた。このクラウドファンディングにはストレッチゴールが設定されており、30万円達成で追加公演、40万円達成で公演DVD制作となっている。しかし集まった金額は304,500円となっており、本来ならばDVDの発売は出来ない。どのような経緯でDVD発売となったのかは、会社のホームページ、社長のTwitterアカウントが消えた現在となっては分からないが、この点について誰も言及していないところから考えるに、何らの説明はなかったものと思われる。

 

・その他雑所感

 クラウドファンディングで集まった舞台予算のうち、20万円は内訳が発表されている。しかし残された予算の10万円で、なぜコスプレ衣装を製作しているのか理解に苦しむ。少しでも音楽制作費に回せば、炎上は防げたのではないか。
 タルヲシル社はボードゲーム新規企画やボードゲーム喫茶開店について、常にクラウドファンディングを組んでいる。しかし何ら声明を発することなく事業を停止している。支援者に対し最低限の挨拶くらいはすべきではなかったのか。またボードゲーム喫茶については、年間パスポートを購入していた客もいたはずだ。その補填についてのアナウンスもなかったようだ。
 原作ボードゲームは漫画化したのだが、正直なところ絵が微妙だ。それどころか、この漫画が連載しているWEB雑誌についての5ちゃんねるスレッドにおいても、炎上について全く話題になっておらず、人気のなさが伺える。
 通常、炎上はさほど長く続かないものだが、この事件は1か月以上もTwitterや5ちゃんねるで話題となった。それには燃料の継続的投下が不可欠であるが、王道エンターテイメント社や、その他タルヲシル社の関係者が随時話題を提供したため、延々と燃え続けることとなった。もし島津社長の暴言が告発されたのち、すぐにタルヲシル社が謝罪し、その後関係者が何も発言しなければ、ほんの数日で鎮火したことであろう。もしかして関係会社・関係者はタルヲシル社に対して恨みがあったのではないか、と勘繰ってしまう。

(次の記事)

タルヲシル炎上事件を振り返る①(導入と、簡潔な事件のまとめ)

 先日のアークライト訴訟事件についての記事を読んだ友人から「タルヲシルの炎上はどう思う?」との連絡を頂いた(いつこのブログがバレた?!)。しかしその事件について、私は恥ずかしながら何も知らなかった。あわててググってみると、3年前に発生したかなり大規模な炎上事件だったようだ。しかし私個人はちょうどその頃、結婚準備に追われておりあまりにも忙しく、ボードゲーム喫茶に行くどころか、仲間と卓を囲むことすらなかったので、知らないことは致し方ないとはいえ、迂闊であった。

 空白期間を埋めるようにその炎上について調べてみたが、ずいぶんと不可解な事件だったようだ。主にTwitterや5ちゃんねるで議論が交わされ、まとめサイトもできているようだが、いろいろと調べていくうちに、3年という時間が経過した今では、当時の議論とはまた違った視点も発見できた。それをまた友人と会話していたら、「それはブログに綴るべきでは?」との意見を頂いたので、非常に長文となるがここに記しておく。

 長文となるので、幾つかに分割して掲載させていただく。記載している論議は、現在2021年8月に検索した情報から私が導き出した論であり、3年が経過した現在では消えているサイトやアカウントがあるため、事実に対し何らかの間違いや勘違いがあるかもしれないことを、最初にお断り申し上げておく。

(2021年から振り返る)事件の簡潔なまとめ

 炎上事件は創作集団タルヲシル株式会社(以下、タルヲシル社)が発売していたボードゲームキズナと蛍の物語』の朗読劇に関して発生した。
 タルヲシル社は自社のボードゲームを朗読劇として上演した。そのDVDを発売したところ、音楽を担当した同人音楽サークル「なりものじあ。」から「サンプルが送られていない」と問い合わせたを受けたが、社長島津岳弘氏は暴言で対応し窓口を閉ざした。音楽サークル側はTwitterにその会話のスクリーンショットを貼り付け告発、あまりにも酷い社長の暴言は大炎上となった。
 炎上後も社長の不穏な言動が続いたが、ほどなくして謝罪文を掲載。しかしそれは「同人音楽サークルに報酬は支払った」というものであった。しかし同人音楽サークル側は「無報酬であった」と発表。報酬を横領したスタッフA氏の存在が浮上。
 タルヲシル社と同人音楽サークルとの交渉は続いたが、炎上から一週間ほどで同人音楽サークル側は沈黙、タルヲシル社は「同人音楽サークル会員のA氏へ支払った」との声明を繰り返す。
 タルヲシル社のボードゲームを印刷していた株式会社王道エンターテイメントも声明文を発表。「全ての関係者の間で報酬の打ち合わせをしていたチャットが存在する」と明言するも、2か月後に「チャット全文を読むと声明文との矛盾があった」とツイートする。
 10月に入り、タルヲシル社と同人音楽サークルの双方は炎上に関連したTwitter投稿の削除を始める。タルヲシル社に至っては社長のTwitterアカウントを削除。会社のTwitterアカウントも作り直す。しかし炎上や和解についての公式声明は無かった。(タルヲシル社の公式Twitterアカウントは自社に批判的なアカウントについてブロックを開始)
 炎上事件が解決しないまま、タルヲシル社は企業ブースでゲームマーケットに参加。しかし2019年春が最後の参加となる。タルヲシル社が経営していたボードゲーム喫茶は閉店。2020年5月にはTwitterアカウントも停止。公式ホームページのドメインも他社に渡る。

 (追記)2021年9月8日、破産開始決定。

 タルヲシル社の炎上に関しては、以下3つのまとめサイトが存在する。
【炎上】創作集団タルヲシルの島津岳弘代表、クリエイター軽視で炎上【ボドゲ】
 タルヲシルとなりものじあ、炎上騒動についてのまとめ
 著作権を無視したタルヲシルが炎上!炎上騒動を詳しく解説!
 また5ちゃんねるは卓上ゲーム板にもスレッドが3つ作られた。

(次の記事)

 

アークライト訴訟事件後のあゆ屋の動向を調べてみる

 アークライト訴訟事件は、そもそも訴訟の前にあゆ屋による『シャドウハンターズ』のパクり事件があったのだが、アークライト社の訴訟事件にかき消されてしまった。かき消されたとはいえ、あゆ屋にとっても諸々の出来事は大いに拡散されてしまっており、非常に不名誉な出来事だったので、商売としては上がったりだろうと思っていたら、どうやら現在でも活動しているようだ。おもにスリーブの印刷が生業となったようだが、Amazonでも商品を見かけるほどには盛況なようだ。アークライト社もあゆ屋も盛況を極めている傍ら、池田氏が長期にわたり休業となっているのは、世の中の矛盾を感じざるを得ない。

 

 さて、現在でも活動を続けているあゆ屋であるが、決しておとなしく商売にいそしんでいたわけではないようだ。アークライト訴訟事件の後に、検索をかける限り2つ問題を起こしている。

 あゆ屋「真相を知りたければここまで来い、しかし貴様は呪われ巨額の賠償金を支払う事になるであろう」

 アークライト訴訟について疑問を呈した人にウザがらみしている。不可解な日本語で呪いの言葉を発する様は、質問主とって愉快でしかなかったようだ。アークライト訴訟事件の時にも見られたが、どうしてこのように稚拙な日本語を使うのか甚だ疑問である。

 LiPLAY: あゆ屋とのやりとりまとめ
 一方で、こちらの方は金銭的被害が発生している。しかも、またしても東方関連のボードゲームにおいて。
 リーブル氏は50万円の融資をあゆ屋に行いゲームを印刷するも、期限を守られず、商品も手元に届かず、出資金も戻らず、最終的に裁判を行い全面勝訴、あゆ屋から強制執行できるようになったとのこと。またあゆ屋は他の債権も抱えていることが記されている。

 

 どうやらあゆ屋という印刷屋はいろいろと問題を起こす企業のようだ。特にリーブル氏との問題は、アークライト訴訟事件時と似た構図となっている。アークライトの提訴により、あゆ屋のパクリ問題はうやむやとなった。きっちりと断罪されなかったゆえに、調子に乗ってまた同じような問題を起こした、と考えるのは早計であろうか。
 いずれにせよ、ボードゲーム印刷を計画している企業・グループ・個人は、あゆ屋への依頼の際には過去の問題行動を検討に入れた方が良いだろう。消費者個人があゆ屋の商品を購入するか否かは、個々人の判断に拠る所であるが、少なくとも私個人はあゆ屋のスリーブは購入しないだろう(美少女物が印刷してあるものは使う気が起きないことも関係するが)。

ボードゲーム人口を増やすためにはアニメや漫画の原作付きをリリースするのが手っ取り早いのではないか

 先日、アークライト訴訟についての記事を書いた後、ボードゲーム業界を拡大する方法について考えるようになった。会社の地方出身者(のオタクっぽいやつ)と話をしたり、地方の支店の人とZOOM会議の後、それとなく雑談していて気づかされたことであるが、昨今のボードゲームブームは大都市特有の現象らしい。話を聞く限り地方においてボードゲーム愛好家はかなり少なく、ボードゲーム喫茶が存在しない、もしくはあったとしても1,2件という地域も少なくないようだ。それどころか往々にして「そういえば公民館でボードゲームやってる集まりを見たことがありますよ」という答えが返ってくる。
 考えてもみれば無理からぬことであり、ボードゲームが認知されるためには同好の士が集まりあわねばならず、しかし地方では人口が少なく、個々人の物理的距離も遠く交通手段も限られるため、集まりあっての趣味は不可能に近くなるのだ。また、そんな中で集まりあったとしても、久しぶりに集まった仲間なので、近況報告や最近のアニメや漫画の話、あるいは飲み会やカラオケといった選択肢になり、あえてボードゲームをプレイすることはありえないのは目に見えている。
 しかしボードゲームが今以上に普及するためには、地方での活性化が不可欠であろう。首都圏のボードゲーム喫茶は現在コロナ禍により淘汰傾向にあるが、以前は飽和状態にあった。これからボードゲーム喫茶の地方進出が始まる、という時期に、コロナウイルスが襲ったのだ。地方進出は多くのボードゲーム関係者が画策していたことであろう。

 ところで、ボードゲームをプレイしたことのない層への布教は、思ったほど難しい。まずとっかかりがないのだ。ボードゲーム愛好家は斬新なルールやパッケージのアートワークをとかく気にしがちだが、それらは初心者には敷居の高さとなってしまうようだ。とっかかりを作るために、往々にしてボードゲーム愛好家たちは「教育に良い」「頭が良くなる」と説得して、ファミリー層を振り向かせようとする。海外においてはファミリー層がボードゲーム市場の主流らしいので、その着眼点はあながち間違いではないのだろうが、子供が小さなころは家族でボードゲームを楽しみ、ある程度大きくなったら今度は友達同士が集まって…というのはずいぶんと悠長な計画なような気がする。それよりも、アニメや漫画が好きないわゆるオタク層をターゲットにしたボードゲームを開発した方が、手っ取り早いのではないかと思う。
 商品はもちろん、原作付きのゲームだ。人気のあるアニメや漫画をボードゲームにする。カードゲームのようにちまちまと集めてデッキを構築するタイプではなく、一つのパッケージで完結するタイプを。(そう、かつてのエロゲーのパッケージくらいの大きさで)
 50代より上の古参のボードゲーマーと雑談をすると得てして、多くの子どもたちがウォーゲームに興じていた少年時代の思い出話となる。インドアな傾向を持つ男の子は友達の家に集まりあい、ガンダムザブングルなどのロボットアニメ原作のウォーゲームで遊んでいたらしい。ファミコンが発売されるより前の情景ではあるが、現代でも同じ切り口が可能なのではないかと思う。人気のあるアニメや漫画をボードゲーム化すれば、そのファンが集まりあった時におのずと遊ぶようになるのではないか。最近では『ゴブリンスレイヤーTRPG』のヒットがあるが、同じように様々なアニメのボードゲームを作成すれば、おのずと集まりあったファンはボードゲームをプレイするようになるのではないだろうか。

(過去のウォーゲームブームは、それはそれは思い出深いものであったようだ。50代以上のボードゲーマーが複数人集まると、必ずと言っていいほど話題に上り、盛り上がる。「ザブングルは遊びやすかった」「イデオンのバランスの悪さはなんだ」「マクロスの恋愛カードゲームでどうやってもあのキャラが落とせなかった」などなど。ボードゲームがオタクの主要な遊び場だった時代というのは、ほんとうに輝かしい思い出なのであろうし、正直言って羨ましいと思う)

 

 しかし原作付きのボードゲームが普及した場合、今現在のボードゲームマニアとの間で軋轢が生まれるかもしれない。ボードゲーム喫茶やオープン会には暗黙のルールが存在するが、新規参入者にはそうしたもろもろが分からないからだ。「あいつらは原作が好きなのであって、ボードゲームが好なわけじゃない」と愚痴るかもしれない。だがボードゲーム愛好家は新参者を温かく迎える必要があるだろう。裾野が広がれば、新しいゲームがどんどん出てくる。新しい仲間もどんどん増える。愛好家なら愛好家らしく、数限りないボードゲームの中から金の砂粒を自らの経験と勘で探し出せばいいのだ。

 

 いずれにせよコロナ禍が過ぎ去った後の話となるだろうが……

アークライト訴訟事件を振り返る

 世間一般では盆と墓参りなのだが、コロナウイルスの感染を警戒して、我が家は自宅待機となった。赤子がいる家庭では無理のない話であり、ご先祖様も理解してくれるであろう。
 そして部屋の掃除に明け暮れていた。引っ越してかなりの日々が経過するが、子育て家庭での部屋の片づけは遅々として進まないのだ。
 私が自分の本棚を整理しつつ、並んだボードゲームをぼんやりと眺めていると、子供を寝かしつけた妻がカルピスを持って来てくれた。たまたまアークライト製品が目についたので、とめどなくアークライト訴訟事件について語っていたら、妻は「それってギルバート・オサリバンみたいだね」と言った。

 ギルバート・オサリバン - Wikipedia
アローン・アゲイン』はさすがに聞いたことのある有名曲だ。ヒットを飛ばしつつも、訴訟に巻き込まれ、クリエイター魂が大きく削がれたらしい。私には友人に漫画家がいるが、プロット作成に七転八倒の苦しみがあるらしいのだが、その様を眺めると、確かに訴訟でもされたら筆を折らざるを得ないだろうことは理解できる。

 アークライト訴訟事件は、株式会社アークライトが名誉棄損で池田康隆氏を訴え、1年近く後にアークライト社が500万円の損害賠償請求を取り下げる形で終了したが、当時のボードゲーム愛好家たちはこぞってアークライト社の無様さをあざ笑ったものだった。訴訟に至る経緯は不可解で、訴状も不可解、そしてアークライト社の全面撤退という始末だったからだ。
 しかし10年近く経過した今から事件を振り返ると、必ずしも笑えない。和解の後、私たちは池田氏の新作ボードゲームを期待していたが、彼はその後ボードゲーム業界から離れることとなった。一方でアークライト社は、大型イベントであるゲームマーケットを主宰するなど、ボードゲーム業界の中心的企業へと成長した。
 アークライト社が池田氏を訴えた事件はスラップ訴訟であると当時しきりに騒がれたが、スラップ訴訟とはウィキペディアによれば「言論の封圧や威嚇を目的として行われる」とのことであり、10年近く経過した現在の状況を以て考えれば、しかり十分に恫喝目的であった。池田氏ギルバート・オサリバンのように、一度傷のついたクリエイター魂は簡単には回復せず、長い療養期間が必要だったのであろう。一方でアークライト社はボードゲーム雑誌を刊行し、イベントを興し、特定のクリエイターを祭り上げ、ボードゲーム業界の中での地位を固めていった。
 この結果は我々ボードゲーム愛好家にとっては良かったのであろうか。もしもこの訴訟事件が無ければ、池田氏は精力的に新作ボードゲームを発表していたであろうし、ボードゲーム雑誌を再び創刊していたかもしれない。現在はボードゲームを作ったとしてもゲームマーケットでのお披露目以外の発表方法はほぼ無いが、発表媒体が増えればボードゲーム愛好家が増えるばかりではなく、クリエイターも増えたのではないか。しかしそれはおそらくアークライト社の意図するところではなく、ボードゲーム業界をゲームマーケットを中心とする業界へと小さく作り上げることにアークライト社は奔走し、そしてこの訴訟事件はそれに一役買ったのではないか……もしこの訴訟事件が無ければ、我々はもっと広いボードゲーム業界を見ることになったのではないか……と10年近く経過した今、思うようになった。